都民塾

都民塾だより No.91

 第91回都民塾(塾長 立石晴康元東京都議、代表世話人 野口和久)が、令和 4年5月19日(木)午後6時半から、東京・中央区の築地本願寺2階講堂で、学 習院大学経済学部教授、滝澤美帆先生を講師に招き、「混迷する世界で日本が生産 性を上げ、活力ある社会を構築するには?」をテーマに開かれ、出席者は熱心に耳 を傾けた。

 滝澤先生は、2002 年学習院大学経済学部卒業。08 年一橋大学博士(経済学)。専 門は、マクロ経済学。東洋大学、ハーバード大学研究員などを経て、19 年 学習院 大学准教授。20 年より現職。現在、複数の中央省庁委員や東京大学エコノミックコ ンサルティング(株)のアドバイザーを務める。主な著書に『グラフィックマクロ 経済学 第2版』(共著)など。

 滝澤先生は「専門のマクロ経済学では、企業のデータ分析がメインです。経済学 の切り口には長期と短期がありますが、私は長期予測で、需要と供給の関係では供 給の分析に取り組んでいます」を話し出した。

 「主要国の GDP の推移を 1994 年から 2020 年までをみると、ほとんどの国が 2 倍 を超えているが、日本だけ 2 倍を超えていない。先進国に比べ、日本は成長してお らず、ダイナミズムがない。GDP を生み出すには労働と資本のインプットが必要。日 本の労働力は、人口減もあり横ばいで、資本力は、民間はともかく公共は減少して いる」

 労働、資本の生産性に言及。「日本の労働生産性は韓国にも抜かれ G7 で最下位、 同じく伸び悩んでいる資本生産性で、いま注目されているのが無形資産。ソフトウ エア、研究開発投資、人への投資の3分野あるが、特に人への投資が少なく、生産 性が上がっていない」

 続いて、「デジタル経済と生産性」、「人材投資と生産性」、「働き方と生産性」、「ビ ジネスダイナミズム指標」について、それぞれ日本の各企業の現状分析やアンケー ト結果を示したうえで見解を述べた。デジタル経済と生産性の課題は、専門人材の 不足にある。人材投資と生産性では、ICT の導入など人への投資、そして有形投資も 大事になる。働き方と生産性では、スキルの高い人を集めることや社員教育の充実 など新しい働き方の導入が肝要だ。ビジネスダイナミズム指標では、日本は、新し い企業が生まれておらず、企業間の成長性のバラつきが縮小し、新陳代謝が進んで いない。企業の生産性は上位5%と下位5%と差が拡大している。市場集中度が上 がっておらず、生産性が高い企業が増えていない。これは、効率的な資源配分がで きていないことがデータにより示されたことになる」

 こうまとめた。「米国は巨大企業が増えているが、日本には現れず停滞、とくに GDP をみると、2016 年以降、ダイナミズムが失われた。GDP、生産性を上げる必要が あり、それには国の支援が必要だ。生産性を上げるには、有形、無形の資産への投 資、労働の質を上げ、企業の人への投資がカギになる」。講演後の質疑応答では、多 くの質問、意見が飛び出し盛り上がった。

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